『さみしい夜にはペンを持て』ーー日記を書くのは何のため?

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誰でも一度は、「日記を書こう」と思ったことがあるのではないでしょうか。
書き始めたものの、続かなかったな……という方が多いかもしれません。

それってきっと、「何のために日記を書くの?」が曖昧だからだと思うんです。
今日の出来事を書いておいて、結局何の意味があるのかな?と。

この本を読むと、「何のために日記を書くの?」がわかります。
きっと、「また日記を書いてみようかな」と思うはずです。

あらすじ


『さみしい夜にはペンを持て』古賀史建
うみのなか中学校に通うタコジローは、学校にも居場所がなく、自分のことが大嫌い。ある日、不思議なヤドカリおじさんと出会ったタコジローはその日から、どんどん変わっていく…(Amazonより)
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主人公は中学生のタコジローくん。学校にタコは自分だけ。
すぐに赤くなってしまうところをみんなにからかわれて、「どうしてタコなんかに生まれちゃったんだろう」と思っています。
学校をサボってしまったある日、ヤドカリおじさんと出会って、日記を書くことを勧められます。

「書く」ってなんで面倒なの?

タコジローくんの気持ち、みんなわかると思うんです。

できればぼくも、あっち側に行きたかった。学校のなかで、びくびくする必要のない側。(中略)だれからも笑われることがなく、いつもだれかを笑っている側。学校に行くのが、たのしいと思える側。

私の学生時代はまさにこうだったので、もう、本当にめちゃくちゃよくわかります。

で、そんな時に「日記なんて書いてなんの意味があるの?」というタコジローくんの言い分、そりゃあそうだよね。
それに対して、ヤドカリおじさんは丁寧に話してくれます。

例えば、「ぼくは文章を書くのが下手だから」というタコジローくんに、おじさんはこんなふうに返します。

タコジローくんは、文章を書くのが苦手なわけじゃない。ただ、ことばを決めるのが早すぎる。手っ取り早く、便利なことばで片づけている。ことばを探す面倒くささに、屈している。おかげで、自分の気持ちから離れた文章になっている。

ああ、耳が痛いです。
「あのドラマ、面白かった」「つまんなかったな~」と一言で片付けている自分を思い返しました。

「面白かった」「つまらなかった」は、ウソじゃないんです。
でも、それがすべてじゃない。

もっと深いところに本当の私の気持ちが隠れているのに、そこまで潜るのをめんどくさがっているんだ、と気づきました。

書くときのぼくたちは『手を動かすこと』が面倒くさいんじゃない。『頭を動かすこと』が面倒くさいんだ。なにかを書くためには、それについて真剣に考えなきゃいけない。その『考える』という手間を、みんな面倒に感じているんだ。

まさにこれです。

「面白かった」「楽しかった」というひと言日記なら簡単に続くのかもしれません。
でも、たぶんそれだとすぐにつまらなくなってしまう。
そこに自分の気持ちが書かれていないからです。

「書く」=「考える」ことは、めちゃくちゃ面倒くさい。
でも、だからこそ面白いんじゃないでしょうか。
日記を続けている人は、そこがわかっているのでは。

この本、すべてが「丁寧」なんです。
丁寧に丁寧に、「日記とはなんぞや」「日記はこう書くと面白い」を教えてくれる本。
だから、タコジローくんも私たちも、「日記なんて書けないよ」という言い訳はできないんです。

現実は変わらないけれど

「書くことがないよ」「愚痴ばっかりになっちゃった」と日記あるあるを抱えつつ、おじさんのアドバイスで日記を書き続けるタコジローくん。

相変わらず学校ではからかわれるし、タコ以外の何かにはなれない。
外側はなかなか変わらないけれど、でも、タコジローくんの中身は確実に変わっていきます
それはもちろん、日記のおかげで。

現実はそう簡単に変わらない。
でも、自分は変えられる。

日記はそのための強い味方なんです。

この本を読んで、あなたも日記を書き始めてみませんか?
さあ、ペンを持って。

心に残った言葉たち

すべての文章は『その時点での答え』なんだ。いま、自分はこう考えている。もしかしたらいつか、消しゴムで消すのかもしれない。書きなおすのかもしれない。でも、いまの自分にとっての答えはこうだ。これ以上、消しゴムが入らない。……そう思えるところまで書き進めてごらん。次の扉が見えてくるはずだから。

ぼくたちが生きるうえでの最大の謎。最期の瞬間まで、ずっとついてまわる謎。それは『自分』だ。自分は何者なのか。心の奥底にいる自分は、なにを考え、なにを望んでいるのか。(中略)もちろん、こういう疑問と向き合わない生きかたもありえる。(中略)ただおじさんは、自分のことを知りたかった。そしてほんのすこしだけ、わかってきたような気がするのさ。これを書いてきたおかげでね。

ぼくたちはたくさんのものを見て、聞いて、感じている。けれどそのほとんどは、意識のなかからすり抜けていく。そういう『すり抜けていく感情』をキャッチする網が、ことばなんだ。

書いても書かなくても、『そういう自分』はいる。『そういう現実』はある。書くから悩みごとが増えるんじゃない。目に見えていなかっただけで、悩みはすでにあるんだ。そして書くことによって、悩みは解決に向かうんだ。

ねえ、タコジローくん。ぼくたちはなにをそんなに『わかってほしい』と思っているんだろう?

ぼくが日記を書き続けているのは、続きが読みたいからだ。ここで終わってしまうのが、もったいないからだ。続きがたのしみで、終わるのがもったいない毎日がやってくるなんて、あのころには思いもしなかった。

『さみしい夜にはペンを持て』古賀史建
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